たとえば、“クロロ安息香酸”と入力すると“o-クロロ安息香酸、2,3-ジクロロ安息香酸、2,3,4-トリクロロ安息香酸”などが抽出されますが、“クロロ 安息香酸”と入力すると、そのほかに“m-クロロ過安息香酸”も抽出されることになります。

○別名、俗称、略号(日本語および英語)でも検索することができます。

<無機化合物(錯体・有機金属化合物を含む)>

化学式は国際純正・応用化学連合、無機化学命名法委員会(IUPAC CommissionII.2)制定の規則に従い、日本語名は同規則に基づいて日本化学会が定めた字訳方式(3.1節参照)に従っています。無機化学命名法の詳細は、3.2節を参照のこと。

有機金属化合物には価数をつけていません。水和物は、化合物と水の割合が11までの整数倍以外は、―水(1/2)、―水(2/3)などの表記にしてあります。
金属元素化合物の中には組成が一定にならないものがかなりの種類にのぼりますが、これらの“不定比化合物”については、こちらを参照のこと。

<有機化合物>

化合物名の検索についての注意:

化合物名はIUPAC 名を主体とし、日本語名は日本化学会化合物命名小委員会が制定した“日本語による化合物命名の原則”に準拠しています。一般に使われている慣用名や通俗名もなるべく採用していますが、すべての別名を採用するわけにはいかないので、検索にあたり注意すべき主要点をあげておきます。

( i ) 特性基を1種類しかもたない化合物では、特性基を接尾語として命名します(ハロゲン、ニトロなどの強制接頭語は例外:3.3節を参照)。

例:3-ピリジノール (3-ヒドロキシピリジンとしない)
ナフタレンジオール (ジヒドロキシナフタレンとしない)
1,6-ヘキサンジアミン (1,6-ジアミノヘキサンとしない)

( ii ) 2種以上の置換基が接頭語として命名される場合、これらの順序はアルファベット順とします。日本語名では、そのままの順序で字訳します(必ずしも五十音順とはなりません)。

例:p-chloronitrobenzene(p-クロロニトロベンゼン)

倍数を表す接頭語di-、tri-、tetra-などは、置換されてない同じ基または母体化合物の一組を示すのに用います。日本語名では、ジ、トリ、テトラなどと字訳しますが、母体化合物が翻訳名をもつときは、二、三、四(シと読む)などとします。

例:ジニトロベンゼン
イミノ二酢酸

“モノ”は、つけないと誤解を生じやすい場合にだけつけます。

例:モノペルオキシフタル酸

多価基のハロゲン化物、エステルなどは、基名で価数がわかるので、数を表す語を省略してもよいです。本書では省略しない名称を使用します。

例:塩化オキサリル → 二塩化オキサリル
酢酸エチレン → 二酢酸エチレン

同一置換基2個をもつエーテル、スルフィド、スルホキシド、スルホン、エステルなどは、ジ、トリなどを省略してもよいですが、本書では省略しない名称を使用します。

例:エチルエーテル → ジエチルエーテル
硫化メチル → 硫化ジメチル
マロン酸エチル → マロン酸ジエチル
リン酸エチル → リン酸トリエチル

置換基の中にさらに別の置換基をもつ複合基名について、同じ複合基が2個以上ある場合は、置換基の数をビス、トリスなどで示し、複合基名はカッコに入れて記します。

例:ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン
トリス(2-ヒドロキシエチル)アミン

一つの結合で連結した同一の環の数を示すには、ビ、テルなどを用います。

例:ビフェニル、2,2'-ビピリジル、p-テルフェニル

同一の基が2個互いに結合した化合物もこれに準じ、基名の前にビをつけて表します。

例:ビアセチル

( iii ) ここでは、1993年のIUPACの勧告は採用せず、1979年のIUPAC 命名法を用いています。

置換位置の表示:

置換基の結合する位置は、アラビア数字を用いる位置番号によって表示します。位置番号は、鎖式化合物の場合は、主鎖の末端を1とし、主鎖に沿って番号をつけます。アルデヒド、カルボン酸、ニトリルとその誘導体の場合、CHO、COOH、CN などの炭素原子が、位置番号1となります。

例:2-アミノエタノール、4-ヒドロキシ酪酸

環式化合物の場合は、環を構成する原子に特定の位置番号をつけます。

例:2-ピリジンカルボン酸
2-ヒドロキシ-3,6-ナフタレンジスルホン酸

鎖式ケトン、カルボン酸などでは、置換位置をα、β、γなどのギリシア文字で表すことがあります。この場合はCOの隣の炭素原子をαとします。環に結合する側鎖も、同様に環の隣の炭素原子をαとし、順次β、γなどの位置記号をつけます。鎖の末端はギリシア文字ωで表します。



例:β-アミノ酪酸、α-クロロエチルベンゼン
ω-ニトロスチレン(=β-ニトロスチレン)

ベンゼンの二置換体では、o-、m-、p-を用いて置換位置を表します。三置換体、四置換体では、置換位置は位置番号で表し、vic-、sym -unsym-などの記号は使いません。

例:p-アミノ安息香酸、1,2,4-トリメチルベンゼン

化合物名の配列についての接頭語の取扱い:

( i ) 置換位置を示すアラビア数字、ギリシア文字、N-、O-などの元素記号、o-、m-、p-、s-、t-、cis-、trans-、syn-、anti-、d-、l-、dl-、(+)−、(-)−、(±)−、D-、L-、(R)-、(S)-、meso-など、日本文字以外の記号や符号は、化合物名を五十音順に配列するさいには無視します。

例:p-ジニトロベンゼン、trans-1,2-ジクロロエチレンなどは“シ”の部に配列します。
ただし、これらの符号が化合物名の一部分となっている場合、たとえばパラアルデヒド、メソシュウ酸のパラやメソは五十音順に入り、それぞれ“ハ”および“メ”の位置に配列されます。

( ii ) 直鎖を示すn-や正は用いません(IUPAC規則による)。たとえば、ヘキサン、ドデシルアルコール、ウンデカン酸、トリブチルアミンなどは、すべて直鎖化合物を表します。
ただし、慣用名や通俗名にはn-をつけてあるものがあります。とくにn-アミルは、広く使われる慣用名としてn-のついた形を採用しています(IUPAC 名はアミルではなくペンチル)。

( iii ) イソ、ネオ、シクロ、スピロ、ノル、ホモ、アロ、エピ、プソイドなどは、iso-、neo-、cyclo-、spiro-、nor-、homo-、allo-、epi-、pseudo-などの符号としないから、それぞれの五十音順の位置に入ります。

例:イソプロピルアミンは“イ”の部に配列し、iso-プロピルアミンとして“フ”の部に入れません。ただし、簡略化した化学式でかくときは、イソを記号化してi-PrNH2とします。
また、シクロヘキサンは“シ”の部に配列し、cyclo-ヘキサンとして“ヘ”の部には入れない。ただし、簡略化した化学式でかくときは、シクロを記号化し、c-C6H12とします。




閉じる