■不定比化合物

 無機化合物には組成比が一定にならないものがある。それらを不定比化合物とよぶ(ベルトライドともいう)。不定比になる原因は3種に大別される。

( i ) 格子欠陥の存在格子欠陥型

( ii ) 固溶体の形成固溶体型

(iii) 結晶格子のすきまへの侵入 ―侵入型(介在型)

化合物の性質のデータおよび5章以下の物性データは、定比からのずれに応じ変化する。
 格子欠陥型不定比化合物は、遷移元素、および12~14族典型元素イオンと、16族陰イオン(O2-、S2-、Se2-、Te2-)との間に形成されるものが多い。それら陽イオンとハロゲン化物イオン、13~15族元素の陰イオンの間の化合物がこれにつぐ。これらの電磁気的・光学的性質は不定比と密接に関係しており、不定比化合物の材料としての性質に大きい影響を与える。しかし、不定比の幅は比較的小さい。文献上熱力学的に安定な不定比幅が明らかにされているもののみ下記に示した。
 固溶体型および侵入型不定比化合物の不定比幅はかなり広く、たとえば、CaMg(CO3)2(Ca,Mg)CO3とかくのが正しい〕のようにCa:Mg のモル比全領域にわたるものもある。性質のちがいはほぼ連続的であることが多い。




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