実験化学講座 (収録:初版〜第5版)

英文表記:The 1st~5th Series of Experimental Chemistry

戦後、日本の化学を急速に再建に資するために刊行された“実験化学講座”は、さまざまな発展や化学研究の形態の変化などに伴ったかたちで改訂または補遺として刊行されつづけ、半世紀にわたって、実験指導書として高い評価を得ています。

戦後、一躍奈落の底におち込んだような状態となってしまった日本の科学。研究の片手間に戦争中の進歩の跡を調べて整理するようなことは、ほとんど不可能に近いありさまでした。ましてや、それらをすべて試して、その特徴を自分の研究に取り入れ、世界の科学と肩をならべられるようになることは、とうてい個人の力で成し遂げられる業ではありませんでした。日本化学会は、これらの事実に直面し、研究者が遭遇する困難と焦慮を少しでも軽減し、日本の化学の急速な再建に少しでも役立つように、会員の総力を結集し、それぞれの専門分野の新実験法を編集したのが、“実験化学講座”のはじまりです。

幸いに敗戦を契機に、わが国の化学界にも従来の独善主義が弱まり、協力への精神が勃興してきたため、成し遂げられたものなのです。

その後、当初より必要性を痛感しながらも、巻数があまりに膨大になるため割愛してしまった機器による化学性質の測定法などが、さらに急速な進歩をして、それらの方法が研究法自体に大革新をもたらし、これらの方法を使わずには研究が進められなくなってきたことを機に、補遺として“実験化学講座 続”が刊行されました。

1950年以降の約20年間は、化学の飛躍的発展を可能にした有力な測定機器がつぎつぎと開発され、それらがまたたく間に普及した時代でした。これによって、化学研究の形態そのものも大きく変化し、各専門分野のおもな実験装置と技術が共通になりました。

このような新たな発展段階に対処して、それにふさわしい標準的な実験指導書を考えたものが“新実験化学講座”となりました。

化学の現状に対応して、各専門分野の研究に共通の研究技術を“基礎技術”、“基本操作”としてまとめ、これに化学合成ならびに各論的特殊技術の巻を配して、全体を有機的に統一するという方針です。

その十数年経過後、とくに物質合成を軸として、レーザー、エレクトロニクス利用機器、電子計算機の発展が、化学の将来動向に著しい影響を与えていた. 20世紀から21世紀への移行に役立つかがくの実験書の役割を果たすべく、“第4版 実験化学講座”が刊行されました。

その後、学問が細分化され、深化する一方で、従来の学問の境界はにじんできており、ひとりの人間がこれまでに教育を受けたことのないさまざまな分野の実験手法を駆使しなければならない状況が増えてきました。

化学的な手法で物質を扱う必要性は、医学、生命科学、物理化学、電子工学をはじめ、さまざまな分野に及んでおり、必ずしも化学のトレーニングを受けていない方々にも役に立つことを目的として、“第5版 実験化学講座”では、導入教育用に4巻の“基礎編”を設けました。

本サイトでは、改訂ごとに、紙数の都合により旧版の記述に委ねた内容もすべてご覧いただけます。


(* 旧英語書名として、Encyclopedia of Experimental Chemistry, 1st〜4th ed.を使用していましたが、第5版より上記の通り変更をいたしました)




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